エンベローブの取扱い
一般の金融で言えば、取引開始時点に100円を借入れ(その資金を商品の売り手に支払って商品を購入し)、その期間の利子V%を加えて元利合計110円を銀行に返済しているのと、資金の動きとしてすでに明らかなとおり、ムラバハ取引が一般金融の貸出と大きく違う点は、金融取引の契約時点で、購入対象物が特定されていることである。
従って、この取引は資金のみでなく実体の経済活動を伴う取引となり、シャリア適格なスキームとなる。
ムラバハは、短期的商業金融の分野(トレード・ファイナンスなど)を中心に、幅広い取引に適用されている。
地域差もあるが、中東ではこのムラバハ方式が全イスラム銀行貸出額は同じである。
金融会社が商品を購入しつつ代金を後払いにするようなこうした取引は、自動車ローンや信販など、わが国でも馴染みのあるものである。
例えば、自動車をローンで購入した場合、車検証をみると、「使用者」には自身の名前があっても「所有者」の欄には金融会社や自動車会社の名称が記載されていることがある。
完済までは、それらの会社の所有権があるという意味では、このムラバハに似た取引と言えよう。
このローンにおいて、自動車購入者はローンの金利を支払う(自動車価格より高い価格を支払う)が、実際のムラバハ取引でも銀行のマージンは一般の金利水準を勘案して決められているので、ほぼ同様の取引だとみることができる。
の6-8割を占めると言われることもある。
タワルクとは、商品市場における商品取引を通じて、金利相当部分を創出する仕組みである。
短期的な流動性管理などに使われる。
イスラム銀行が一時的に資金を必要としているケースを想定しよう。
一般の銀行の場合は、妬短期金融市場(マネー・マーケット)から調達すればよいが、それでは金利が発生してしまい、イスラム銀行には適さない。
商品市場の存在を前提として、金利の概念を使わない資金調達を可能とするのがタワルクである。
取引の一例をみてみよう。
まずイスラム銀行は、商品ブローカーAを通じて、市場からある商品(ここでは銅としよう)を、市場価格十マージン(X+α)で代金後払いで購入する。
イスーフム銀行はその銅を取得すると同時に、別の商品ブローカーBに市場価格(X)で売却する。
こうした取引により、イスラム銀行は金額Xのキャッシュを即時に取得し、後日、αのマージンを上乗せして返済する。
これにより、一般銀行が短期金融市場(インターバンク・マーケット)で、イステイスナは、工業製品調達や建設プロジェクトなどの資金供与のために利用される。
製品や建設案件に関する詳細条件を踏まえつつ、銀行の顧客である発注者に代わって、銀行が製造・建設業者に資金を先払いする金融取引である。
そのアラビア語の意味が「作らせる」ということを念頭に置くと、イメージが湧きやすいかもしれない。
こうした事例は、案外身近なところでみられるかもしれない。
例えば、金融コミックの「ナニワ金融道」にも似たような取引を行なうシーンが登場する。
そこでは、当座の資金に困った若者が、クレジット・カードで新幹線のチケットを購入し、それを金券ショップで額面より低い価格で購入してもらう。
クレジット・カードの支払いは後になる一方、金券ショップで販売した代金は即時入手できる.この場合は、金利水準云々はさほど関係ないが、取引の構図として、商品購入・即時転売で手許にキャッシュが得られるという点では類似していよう。
買い手銀行の顧客である建設プロジェクト発注者は、建設のための資金を必要としている。
そこで、銀行に対してその建設プロジェクトの詳細な情報を提供し、建設する業者に発注してもらい、同時に銀行は建設のための資金を支払う。
その建設コストは100円となっている。
建設業者は、その建設案件が完成した時点で銀行あるいは発注者(建設物の引き取り手)に引き渡すが、発注者はその時点あるいは事後的に銀行に対して、製品の代金110円を支払う。
銀行からみれば、取引開始時点でまず100円を支払い、事後的に110円を得ていることから、当該期間について3%の金利で貸出したのと同様の形で資金が動いている。
銀行の顧客である発注者についてみても、取引開始時点(発注時点)では資金が不足しており、当面の資金につき銀行に対して「借り」を作り、事後的に10%を上乗せして代金を支払っているため、取引開始時に100円を借り入れ、当該期間の利子3%を加えて元利合計110円を支払っているのと、資金の動きとしては同じである。
建設プロジェクトを工業品製造に置き換えても、同様のことが言える。
なお、発注者と銀行との間で、第一の「作らせる」契約が結ばれ、それを受けた銀行と製造者の間で第二の「作らせる」契約が結ばれる。
それぞれ「ファースト・イスティスナ契約」、「パラレル・イスティスナ契約」と呼ばれる。
先に述べたムラバハとの大きな違いは、金融取引の契約を結ぶ時点で、その対象となる商品取引が実体として存在しない点である。
前述のとおり、ムラバハ取引では、商品が特定される必要がある。
実体のある経済取引を重んじるシャリアの考え方に沿った条件である。
一方、イスティスナでは、金融取引の契約を結ぶ時点では、取引対象となる現物がない。
シャリアは実体のない将来取引を嫌うが、イスティスナのスキームでは、建設や製造の対象となる条件の詳細を定めることにより、対象資産が(現存しないにせよ)明確に特定されていることから、実体のある取引と見なされ、シャリア適格と解されている。
商品利用者イジヤライスティスナに比べ、より単純なイスラム金融取引の概念に、サラームと呼ばれる形態がある。
これは、代金先払い契約であり、短期商業金融等にしばしば利用される。
イジャラは、一般の金融でいうリースとほぼ同じ取引である。
銀行の顧客である利用者は、物品等の利用料としてリース料を支払う。
このリース料が、利子相当の部分となる。
一般に、リース料の水準は物品の価格および金利の水準に準ずるため、このイジャラ取引のもとでの利用料も、一般金融の利子率と近いものになる。
このスキームも、ムラバハ同様、対象となる資産が特定されており、実体の経済活動を伴う取引であるため、シャリア適格となる。
イジャラのスキームは、物品を利用する際のリースなどにも適用されるが、前述したようなデイミニッシング・ムシャラカに基づく住宅ローンや建設プロジェクト向け案件などで、住宅や建造物の利用料という形で顧客が金融機関に対して金利相当分を支払う際に応用されることも多い。
イジャラ・ワ・イクティナ、リース期間満了後に所有権が顧客に移転するスキームもあり、それはリース後の購入という意味で、「イジャラ・ワ・イクティナ」取引と呼ばれる。
法人用の資産購入のほか、個人向けの住宅ローンなどにも利用される。
前述した「デイミニッシング・ムシャラカ」との違いは、イジャラ・ワ・イクティナ取引では、概念上、リース期間満了までは所有権がすべて銀行にあるという点である。
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